最初に許すのが自分である理由は、そうしないと誰も許せないし、先に進めないから。

中谷英貴です。

 今までに二度と許せないほど人に腹を立てたことは
 誰にもある……わけではないのかな。

 私にはありました。
 会社の上司や同僚ということもありましたが、
 やっぱり、
 ある時の父であり、
 ある時の母でした。

 この怒り、憎しみが邪魔になって、
 物事に集中できず、
 困り果てていたことがあります。
 この感情に依存していたのでしょうね。

 何とかしなくちゃ。
 そう思いました。
 まるでモノを動かそうとでもするように。
 自分とは無関係の無機物を処理しようとするように。

 心理を学び、
 自分の中にいる自分と巡り合うにつけ、
 その考えが傲慢であると思い知らされました。

 自分の一部であり、
 時に自分を守ってくれたその感情を、
 邪魔だからと切り捨てようとしていた。 

 怒り、憎しみの陰に隠れていた、
 自分への憤りを見つけ出すことが最初でした。
 そして、憤っている自分に、
 しっかりと寄り添い、受け入れる。
 それができると、嘘のように
 怒りも憎しみも消えていきます。
 自分の一部が発していた訴えを
 聞き取り、理解し、受け取ったからです。
 自分を許すことができたときでした。

 自分を受け入れるほどに、
 父や母に対するわだかまりが消えていき、
 彼らを一個の不完全な人間として
 頭ではなく、皮膚感覚で
 感じられるようになりました。
 子供の頃とは異なる感覚で
 親を一個の人間として好きであることに気づいたときです。

 それまで、
 つまづいたり、
 思考がついていかなかったりしたこともまた、
 スムーズに進むようになりました。

 最初に、憤っている自分
 (それは同時に落ち込んだり
 卑下したりしている自分でもあります)を見つけて、
 その理由を感覚で感じ取ってみる。
 自分自身なのだから、
 自分には理解できる感覚があるでしょう。
 そこにしっかり共感する。

 最初に自分を許す。
 その分だけ、他者を、世界を許し、
 許容できるようになる気がします。

 お読みいただきありがとうございました。