お祭り屋台の裏側に感じた大人の事情

中谷英貴です。

 子供の頃の話です。
 父は某メーカーに勤めていたのですが、
 その会社が年に一回、
 地元との親交を兼ねて
 夏まつりを開催していました。
 私のように、
 その会社に勤める親を持つ子供たちは、
 いち早く開催日を知ることができ、
 その夜が来ると隣近所の子供たちとともに、
 ウキウキと出かけました。
 公然と夜に出かけることができるというのも
 小学生にとってはとても
 エキサイティングな出来事というのも
 あったと思います。

 会社の敷地に入って広いグランドに出ると、
 中央に盆踊りの太鼓をたたく櫓が組まれ、
 外周に沿って
 焼きそばやたこ焼きや綿菓子などの屋台が
 所狭しと並んでいました。

 なぜか記憶にある
 チェ〇オグレープのジュースを飲み、
 タコ焼きを食べるうちに
 時間が過ぎていきました。
 屋台で売り子をしている大人たちも
 ビールやカップ酒(?)で
 徐々に出来上がりつつあったようで、
 目の前をちょろちょろする我々ちびっ子たちに
 声をかけてくれます。
 父が家族の前では普段、
 不愛想丸出しの人だったので、
 白い歯を見せて応対してくれるおじさんたちを見て、
 会社というところは
 ほんとは楽しいところなのかしらん、
 という感想がちらりと脳裏をよぎりました。

 隅の方にあった屋台の近くを通った時のことです。
 大きくはありませんでしたが、
 奥から「もっと真剣に取り組め」とか
 何か叱責するような声が聞こえてきました。
 我々がそっと覗くと、
 おじさんが若いお兄さんに厳しい顔で
 お説教をしていました。
 若いお兄さんは俯いたまま頷きながら、
 話を聞いています。
 よくわかりませんでしたが、
 その屋台で売っているものの売り方が
 よくないと言われているようでした。
 子供心に、お祭りの屋台で
 そんな頑張って売るとかしなくてもいいのに、
 と思ったのを覚えています。

 でもきっと、
 屋台もまたそれなりの収益を期待していたのかもしれないし、
 そのお兄さんは売り方の勉強をしていたのかもしれない、
 もしかしたら、
 故河合隼雄さんがおっしゃられていたように、
 若いお兄さんが叱られるという形で、
 上司の愚痴を聞いてあげていたのかもしれない。
 今ならいくつかの推測が浮かびます。
 同時に、
 子供なりに、お祭りの裏側は結構大変なんだ、
 ということを見知ったときでもありました。

 何か悩み事やうまくいかないことがあると、
 つい、自分の生い立ちや働く状況や
 そういったことばかりに目が向いてしまうものだけど、
 自分がそうであるように、
 裏事情もまた人の数だけあるのでしょうね。
 
 私はこんな話に縁があるようで、
 もう少し歳を重ねた時には以下のようなことにも
 遭遇したことがあります。

 肝試しバージョン
 https://nakatanihidetaka.com/courage-test/

 ちなみに今回の話、
 一緒にお祭りに行った友達は
 数日後には「そうだっけ?」と
 記憶から消えていました。
 性格なのかな。

 お読みいただきありがとうございました。