いつかこの世からいなくなる。

中谷英貴です。

 先日、お坊さんの話を聞く機会がありました。
 死の話です。
 いくつになっても、それこそ70代になっても80代になっても
 肯定的に諦念として死を受け入れている人は
 ほとんどいない、ということです。
 芥川賞作品「おらおらでひとりいぐも」の桃子さんは
 そんな心境を語っておられます。

 父の自死があって、自分もいつか死んでしまうことを
 その時にしっかりと意識したつもりでした。

 しかし、現実はと言えば、
 心や体が動かなかったり、
 当時していた仕事に追い詰められていたり、
 しているうちに、
 気がつくとあくせくと日々を過ごしてしまっている。
 そうやって過ごしても、
 それが充実している時間だったり、
 気持ちの良いものであればいいのだけど、
 得体のしれない不安、
 何とはなしに迫ってくる罪悪感、
 もう何も変えることなんてできないのではないかと感じる未来、
 そういったものにおおわれたまま時を過ごすうち、
 そのおおわれた世界が本物になってしまう。

 その世界に肩までどっぷりとつかって生きていると、
 何かをしようとする前に、
 人生が終わってしまう。

 何かとは別に、
 名声を得たり、
 大金を得たり、
 地位を獲得したり、
 することではなくて、
 死が訪れた時に、
 「ああ、生きてきてよかった、楽しかった、幸せだった」
 と少しでも感じられるような
 そんな何かです。

 私もあなたも、あなたの大切な人も、大嫌いな人も、
 いつかこの世からいなくなってしまう。
 いつまでも生きられるわけではありません。
 特に、平均寿命などという数字に誤魔化されて、
 その歳まで健康に生きられて、
 その歳まで何でもできる
 などという保証なんてないし、
 おそらくもっと早くに
 体のガタは来るかもしれません。

 生き急ぐ必要はないけれど、
 いつか訪れる“時”を自分で決めて、
 そこまでに
 できること
 したいこと
 すると決めたことを
 一つ一つこなしていきたいですね。

 ふて寝してられるほど人生は永くないんですよね。

 お読みいただきありがとうございました。