体は生きている。体に宿る心も生きている。

中谷英貴です。

 原家族の離散と肉親の自死は、
 世の中に対する多大な不信を植え付けた。

 世の中に対する、とは勝手な言い分であることは
 重々承知していて、
 今にして思えば、
 そう思い込んでいないと
 自分の出自への不信が募りつくし、
 最後は自分の存在を危うくしてしまうことを、
 無意識が知っていたからだと今ならわかる。

 その頃には、
 ピタゴラスの定理も、
 アルキメデスの原理も、
 オームの法則も、
 太陽が東から登ることも、
 水は100度で沸騰することも、
 何もかもが信じられなくなっていた。
 この状態でよく本など読んでたなと思うし、
 そんな時でさえ、
 スクワットをし、
 腹筋腕立てを繰り返し、
 ジョギングし、
 くたくたになるまで汗を流して日々を乗り切っていた。

 振り返ってみれば、
 そんな危うい状態であった自分が
 社会とつながって何とか生きてこられたのは、
 そうやって体を生かしていたからだと思う。
 それが心の極限の暴走を何とか止めてくれてもいた。

 思い込みから自分を抹殺してしまう哀しい話が、
 最近は若干減ったものの、
 年に3万人という自死者の数をわが国で数えている。

 苦しい人は本当に苦しいと思う。
 でも、体を生かしてほしい。
 すると心は生き残ることができる。

 お読みいただきありがとうございました。