戻らない時の中には、かけがえのない自分を生きる原動力が眠っている。

中谷英貴です。

 私たちは過去を持っている。
 例外はない。
 過去が、というより、
 過去の受け止め方、
 解釈が今を決めている。
 その集積の上に未来が作られる。

 だから矛盾するようだが、
 今に生きたい、
 でもできない、
 というなら、
 過去の受け止め方、解釈を変える必要がある。
 なぜなら、過去の受け止め方は一つではないからだ。
 誤解を恐れずに言えば、
 人はその時々で感じたいように理屈をつけて、
 過去を受け止めている。

 行き詰っている時、
 先が見えない時、
 自分が生きる価値を感じられない時は、
 古き時代は悪しき時代になっているか、
 良き時代は戻らないと落ち込んでいる。

 私たちは感情を選択する生き物である。
 過去のシーンも、
 過去の人物の表情も声音も、
 手触りも、気温も、色も、
 そして、それらに抱く感情をも選択している。

 まず良き時代をきちんと感じなおそう。
 もう終わってしまったことだから、ではない。
 終わってなどいない。
 もう一度言う。
 断じて、終わってなどいない。
 その証拠に、
 終わったことのために
 現に今苦しんでいるではないか!
 
 そんな過去があって、今があるのだから。
 良き時代がない人はいない。
 良き時代がないと思いたいだけだ!
 期待や幸福を
 裏切られたり、
 失ったりして、
 ショックを受けるほど、
 良き時代を知っているということなのだから。

 それを皮膚感覚で納得できた上で、
 もう一度心の中で、
 その時の自分と出会うことは、
 今、自分を追い詰める存在によって欺かれ、
 感じられなくされてしまった自分、
 かけがえのない自分を生きていくための
 大、大、大前提です。
 
 お読みいただきありがとうございました。