相反する感情が必要なくなる時

中谷英貴です。

 自らの中に、相反する感情が渦巻いて、
 自分が焦燥感にかられたり、
 親しいはずの相手と凄まじく対立しあったり
 する人がいます。

 私の父母はその典型だったし、
 かくいう私もまた
 若い頃に何度かそんな、
 誰も味わいたくない感覚にとらわれたことがあります。

 相反する感情って何でしょう。
 どうして一人の人や一つの物事に
 そんな矛盾するような
 正反対の方向へ向かうような
 感情が両立(?)するのでしょう。

 上述の父母の関係がずっと胸の中にあって、
 私が世の中とかかわる際の歪みとして出ていたこともあって、
 心理の世界に入った頃から
 どこかで答えを探していました。

 わかったこと。
 分裂した二つの自分なんですよね、
 この相反する二つの感情は。

 例えば、
 被害者意識という他者に向けた感情と、
 その裏側でそんな状態の一端を担う自分への罪悪感。

 憤りと無力感。

 子供の自分が内側で叫ぶ声と、
 大人の自分が感じる情けなさ。

 そう言った感情とその時の自分。
 白黒つける必要なんてない。

 ただ、今のそう感じる自分、
 そしてかつてそう感じていた自分
 双方をしっかりと、目一杯本気で感じ取り、
 彼ら彼女らが自分の一部である愛おしさに感謝し、
 ことあるごとにその感謝を繰り返す。
 ちょうど二人並んで歩く友人のように、
 時になだめ、時に勇気づけ、時にたしなめ、
 また一緒に歩き、座り、眠る。

 徐々に自分の中で一体化が進んでくるほどに、
 相反する感情が徐々に薄らいでいきます。
 もう必要がなくなるからです。
 自分の一部を切り離して
 時に相手に投影して、
 相反する感情を生み出していたのだから。

 自分を受け入れると、
 もう必要なくなるんです。
 私はその時、
 ふわりと愉快な感覚が
 自分の中に宿った気がしました。

 お読みいただきありがとうございました。