その素敵な感覚感情が今この瞬間も共存できますように

中谷英貴です。

 今を生きられるといい、
 でもなかなかできないことが多い、
 だから過去や未来をむやみに遠ざけるのではなく、
 ことに過去についてはしっかりと向き合っていこう。
 そう何度か話をした記憶があります。

 逆説的ですが、
 そうはいってもやっぱり
 今を生きられるといいですよね。

 かつて、原家族が離散した直後から、
 自分の中に湧き続けていたのは、
 父の、
 母の、
 あんな仕打ちや言動や、
 こんな残酷でひどいことばかり、
 と
 悪いシーンを思い出しては、
 怒りと混乱に取り込まれていました。

 そこから長い時間の末に自分を俯瞰できるようになって
 人並みに感じられるようになったことは、次のような、
 言葉にしてしまえば、ごくごく当たり前のこと。

 彼らが生きてきた人生で学んだことをもとに、
 互いにいがみ合いながらも
 衝突を繰り返しながらも、
 時に別の生活を求めたくなりながらも、
 彼らなりの精一杯で子供を育て
 私を育て上げてくれたということ。

 私自身が、見たくなかった自分をもう一度
 自分の中に迎え入れ、
 一体感を深めるほどに進んだ、
 両親に対するそんな想いは、
 同時にもう一つのシーンをも見せてくれるようになりました。

 当たり前と思っていた日常は
 今もまだ自分の中に息づいていて、
 それが今も自分を見守ってくれているということです。

 冬の夕方、へとへとになるまで遊んで帰ってきたら、
 台所から漂ってきたおいしそうな夕ご飯のにおい。 

 初夏の夜に開け放たれた窓からはいってくる
 柔らかな風の涼。

 母のよくとおる笑い声。
 父の身に沁みついたタバコのにおい。

 ここに書ききれないほど無数にあるいくつものシーン。
 今もまだ、というより、信じられる今となって、
 これからを生きる素敵な原動力として
 自分の中に存在していることを実感することができています。

 どうか、哀しみや怒り、混乱と戦うことで、
 大切な人生の時間を浪費しないでください。
 そして、その裏側にある存在に、
 ささやかでも視線を注いでみてください。

 苦しくて悲しいと感じているのなら、
 そこにはきっと、あなたにしか感じられない、
 あなたを生きるための原動力となる想いが
 見つけてもらうのを待っているはずです。
 
 お読みいただきありがとうございました。